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2016年2月17日水曜日

第38回戦 忍び寄る鴻海テリー・ゴウ②

「そんな事ができるんですか!?」

都立技術開発センター(仮名)の光学エンジニアの横田君は声を上げた。
米半導体大手に頼まれて作り始めたリアルタイム3D合成チップのめどが付いたので、現実の空間と類似の光線を再生して映像が浮き上がって見える光線再生方式のディスプレイの研究を一緒にしようという提案をしたのだ。

「その名もパシウム・ディスプレイだ」
マイケルは嬉しそうに答えた。いつの間にか商標まで考えているらしい。光のパスを再生するのでパシウムか。

「光線再生方式のディスプレイ、僕もいつかは作れると思っていたんです。前の会社は、全然冒険させてくれないから、研究がやりたくて僕はここに移って来たんですよ」
横田君は瞳をキラキラさせた。
夢を捨ててないエンジニアは素敵だ。

横田君はカチャカチャと光学シミュレータを叩き、マイケルの理論が可能かどうかを確認した。
「できる。理論上はできる」
横田君はパソコンに向かって頷いた。

「理論上できても、そこからが難しいんです」
パイオニアで3Dディスプレイを作ってきたダイちゃんが釘を刺した。
ハードウェア作りはソフトウェア作り以上に難しい。というか、細かいハードルが多い。物理的な世界が関わってくるので、つまらない話だがチップ設計に成功しても電流や抵抗、歩留まりなどでコケることなんてザラだ。

特に光は、電波と同様で一筋縄ではいかない。光は曲がる、散乱する、屈折率は色によって異なる、など現実世界でテストする時とシミュレーション上でテストするのでは天と地ほどの差が発生する。

「焦点はピクセルをいかに作るか」
マイケルは呟く。

「材料に何を選択するか、材料の開発も必要になるでしょう」
ダイちゃんがマイケルに続く。

「今から材料なんて現実的ではない。ありものでラフな実験を行なってからブラッシュアップをするのはいかがでしょうか」
横田君が提案をした。

「でも、こんな巨大プロジェクト、どこから手を付けましょう?」

「まずは、複数の光線を発生させられるピクセルの研究開発から始めよう」

「そうしましょう。では、助成金申請には技術評価が必要なので、僕も資料作成をお手伝いします」
横田君は大はしゃぎだった。
それはそうだ。研究が好きな人なら、できそうでできなかった未知の分野に踏み出してみたいという願いを持っている。挑戦したい。でも、自分ではカバーできない技術がある。だから、エンジニア同志でコラボレーションするのが理想だが、組むエンジニアが自分の理想のソリューションを持っているとは限らない。でも、チップで映像の高速処理ができるなら、可能性は低くは無い。

技術評価の日がやって来た。
審査員に技術説明を行ない、反応はかなり良かった。

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待合室に戻ると横田君が駈け込んで来た。

「深田さん、技術点において横田・R社チームがぶっちぎりナンバーワンです!」

「ハイ・ファイブ!!」
深田、横田、マイケル、ダイちゃんは手を上げてバチーンとタッチをした。
ディスプレイを作るのでなく、光線再生型ピクセルの開発にテーマを絞ったのが良かったのだ。

お台場からの帰り道、全員が興奮を隠しきれない様子だった。
リアルタイム3Dを開発してきたマイケルに浮かび上がる3Dディスプレイの研究を続けてきたダイちゃん、皆の思い描いていた夢の研究に一歩近づいたのだ。

数日後、横田君から「深田さん。後でお電話宜しいですか?助成金事業の件なんですけど」とメールがあった。
深田は胸騒ぎがして、すぐに横田君に電話を掛けた。

「どうしたの?」

「実は、小林英里さんが・・・」

「エリちゃん?元副社長の?」

「その、小林英里さんがR社いなくなったので契約は出来ないと言われました」

「どういうことなの?」

「パシウム・ディスプレイの権利を小林英里さんが主張しているから、権利争いに巻き込まれたくないのでうちは関わりたくないそうなんです。だから、本当にごめんなさい」

さっきまで明るかった視界が、急に真っ暗になったような気がした。
エリちゃん。あんなに何年も仲良くやって来たのに、いなくなってもとことん妨害するのか。

パシウム・ディスプレイ。
始まってすらいない製品の、権利の取り合いが始まった。

TO BE COTINUED

2016年2月16日火曜日

【第37回戦】忍び寄る鴻海テリー・ゴウ①

(本編です。2014年暮れごろの話)

「リアルタイム3Dチップを作ろうと思う」
マイケルが唐突に言い出した。

「ハァ?」
深田は面食らった。こないだ作ったばかりのVatroni低遅延型動画伝送システムが出来上がったところで、まだ販売プロモーションにもロクに入っていない。

「ちょっと待ってよ。まだ無線動画伝送システム売って、回収しないといけないんです」

「新製品が無いと売れないだろう。というか、もう殆どできた」
マイケルは事もなげに答えるので深田はずっこけた。
実は、この世にリアルタイム3D合成ソリューションは存在しない。3D映画は右目と左目の映像を撮るために二つのカメラで撮影して、奥行き感を表現するのにCG屋がリタッチしているので異常に時間が掛かるし、コストも半端ない。ハリウッドでは3D映画製作の予算に数十億円かけることもザラだ。

「いつの間に作ってたのよ?」

「え?米大手半導体企業がリアルタイム3Dモデリングチップを一緒に作ろうって頼んできたので作っていたけど、フカダが忙しそうだから、言うのを忘れていただけだ」

「で、どこまでできたの?」

「カメラを複数台繋いで、システムに通すと3Dモデリングが出てくる」

「は、実写?」

「そうだ。リアルタイム実写3Dだ」

「そんなことできるの?」

「人間の目と同じだ。視差から奥行きを計算するだけだろ?それを高速でやればいいだけの話じゃないか」
今にも『地球人は知能が低いからなぁ』と言った雰囲気で宇宙人マイケルは淡々と答える。今の世の中、3Dモデリングの計算には何分もかかるのが普通だそれがリアルタイムなんてやばすぎる。

「そんなチップ作っちゃったら、またスパイが押し寄せてくるから気を付けてよ!」
深田はマイケルに抗議した。
マイケルと出会ってから第迷惑だ。
こいつは米軍の音速機用遠隔操作システムを作って以来、中国人民解放軍、国安諜報員、台湾暴力団青幇、その配下のフロント企業、日本からは在日朝鮮系のフロント企業やらが波のように押し寄せてきている。

「だから米大手と作ったんだよ。何かあったら、すぐに俺の代わりに訴訟してくれるだろう。それに、フカダはインテリヤクザが来たって、法廷でヤクザ弁護士が出てきたって怒鳴って追い返すような鬼子じゃないか」
マイケルは応える。

「なんだとぉ!!」
深田は額に青筋が立った。インテリヤクザとの怒鳴り合いの戦いや、柴田睦夫共産党議員お抱え弁護士梶原利之のチンピラぶりに深田がどれだけストレスを感じてきたかと思い返すと怒りでプルプルしてきた。

「怒るな、鬼子」
最近、周囲の中国人が私を鬼子と呼ぶようになったと思ったら、どうやらマイケルが言いふらしているようだ。

ピンポーン。
オフィスのインターホンが鳴る。
「こんにちは!ディスプレイ開発のダイちゃんです」

元パイオニアのディスプレイエンジニアのダイちゃんだ。

「マイケルさんに呼ばれてきました」

「え、何の件ですか?」

「映像が浮かび上がる3Dディスプレイの開発で伺いましたが」
ダイちゃんの言葉に深田は噴き出した。
そんな話聞いたことも無い。

「マイケル!まだ3Dチップも出来上がってないのに、3Dディスプレイ作る気なの?いい加減にしてよ。会社がパンクする!」
深田はキッとマイケルを睨み付ける。これ以上開発費ばっかりかけられたら、開発費を回収するどころの騒ぎじゃない。

「大丈夫だ。デコーダもあるし、あとは光学シミュレーションとマルチ光線ピクセルの開発だけで終わる」

「絶対にそれだけで終わらないし、そんな開発にかけるお金は無い!」
開発は素晴らしい要素技術があっても、部品の組み合わせや信号同期等のつまらないところで意外と時間が掛かる。時間が掛かればそれだけ経費が飛んでいくのだ。

「深田さん。お金なら、機構と一緒に助成金を取ればいいんですよ」
ダイちゃんはニコニコしながら答えた。

「そんなこと、できるの?」

「はい。東京都の技術開発センター(仮名)に行けばいいのです」
ダイちゃんの言葉で、三人はさっそくセンターのあるお台場に向かった。

続く

2016年1月17日日曜日

第36回戦追記 併合上申の謎




36回戦の話は裁判所の手順が少しわかりにくかったと思うので、追記します。
併合上申は、新しい訴訟を古い訴訟に併合するという要求を書いた上申書のことで、新しい訴訟をする時に古い裁判と一緒にやった方が効率がいいので「併合して一緒にやりませんか?」と裁判官にお願いをするシステムです。
これは、両方の裁判官の同意が必要な手続きになります。
このアルファアイティーシステムによる深田新会社への訴訟の旧会社への訴訟との併合上申にはかなり不自然な点がありました。
1.訴状提出日が土曜日であること。
2.最初の担当部署が37部であったこと。
3.なのに、37部で取り扱った裁判官と書記官の名前が存在しないこと。問い合わせても「いない」としか言われなかったということ。
4.訴状提出が土曜日で翌月曜日には37部を素通りして48部に到着して同一期日同一法廷で口頭弁論が開かれることになったということ
5.48部にクレームすると、「併合されていない」と藤井書記官からの回答が来たこと
6.併合されていないなら、何故、37部素通りして48部にこの裁判が移動しているのかというふざけた話が残っているということ
7.梶原利之の上申書には「48部での訴訟における進行についても、新しい訴訟が提起されたら48部に口頭弁論を併合することが予定されている」と裏で遠田真嗣裁判官と話を付けていることを自ら露呈している。
下記、証拠画像です。
これ梶原利之弁護士が作った上申書の一ページ目ね。

問題の一文は赤線引いてます。
いつのまに遠田裁判官と連絡して同意を取ったのか?
裁判記録を見ても一切記録はありません。

こういうインチキをして一般市民を騙すのは、どうかと思うんですね。
私は執念深い性格なので発見しましたが、何も知らない人だったら騙されていると思うんですよ。
私は、そういうシステムの歪みみたいなのを悪用されていることが許せませんし、もしも、他の人だったらアッサリ騙されて四重請求裁判にあっという間に負けていたと思います。
これからも激しい戦いが続くと思いますが、皆様の応援を有り難く受け止めています。

2016年1月16日土曜日

第36回戦 新法人への訴訟、旧法人への訴訟




(2015年一月、二月頃の話)
新会社は立ち上げから、世界最速の無線動画伝送装置Vatroniが売れ始めた。
それまでのVATRONIは、高速動画圧縮機能しかなかったのだが、それにフルHDを高速で伝送する機能が加わったのだ。
本人が自覚してないのが厄介なのだが、マイケルが作るものはいちいち世界初とか世界一だ。
「え、VATRONIって世界一だったのか?俺は知らなかった。普通に作ったらこうなっただけだ」
と、マイケル自身はこんな調子だ。
本人は自分の知能がどれだけ世の中とかけ離れているのが自覚に乏しいので、マイケルの技術を横取りしたがる輩からマイケルを守るのに周囲は大変なのだ。
「フカダァ!大変!!」
台湾のマイケル元秘書のジュディから電話が入った。
「ジュディ、今度はどうしたの?」
「マイケルの台湾の会社が訴訟されたの!」
「え?清算中でしょ?」
「株主の東元電機の黄茂雄の差し金みたいです。新しい無線動画伝送装置VATRONIの権利を主張してます」
「ブー!!」
深田は飲みかけのお茶を吹いた。
マイケルの台湾の公開会社なんて、10年近く前に解散したのに当時の株主がまだ権利を主張するなんてあり得ない。
しかも、主張する権利は深田の会社の製品だなんて、エレクトロニクス業界王道の「スートゥオウン(訴訟で潰して手に入れろ)」の王道を来ている。どれだけ貪欲なのだ。
ピンポーン
オフィスのチャイムが鳴る。
郵便局員だ。
なんだろうと茶色の封筒を受け取る。
訴状だ。
「また、裁判か!?」
アルファアイティーシステムからの新法人に対する訴状だった。訴状の内容は、前回と殆ど同じでその上添付の証拠は殆ど無かった。
「マイケル、アルファアイティーシステムから新会社への訴訟が始まった!」
「なんだと?内容はなんだ?」
「詐欺だと」
「バカ言え。新会社はアルファアイティーシステムと何の契約も無いし、架空請求の上に四重請求だろ」
アルファアイティーシステムは、旧R社、深田個人、マイケル個人にそれぞれ一千万円、さらに新会社にまで一千万円を請求し、合計四千万円請求してきたのだ。
深田は期日を確認すると、なんと、旧R社の期日と同一日時同一法廷同一裁判官遠田真嗣だ。
「そんな、バカな。新たに裁判を起こすと、東京地裁の50近くある部署にいる数百人の裁判官からランダムに裁判官が選定されるはずなのにそんな事あるか?」
訴状が提出された日は土曜日、37部に配転されたはずの訴状は翌月曜朝には遠田裁判官のいる48部に回されている。
「東京地方裁判所内に絶対に中国工作員がいる」 
確信した。
国賠訴訟の内容も部署に訴状が届く前に中国共産党に届いていた。そして、今度は受付素通りで梶原利之弁護士の思い通りになる裁判官のところに訴状が届いている。
深田は、この国の闇に不気味さを覚える。
自分たち、一般の日本人ができないことを何故中国人や在日の一派には可能なのだ。
東京地方裁判所、その闇の深さは絶望の裁判所で語られる以上の深さを予感させた。
TO BE CONTINUED

2016年1月3日日曜日

【第35回戦】 公安警察、ついに始動

「一個、二個、三個・・・」
深田は倉庫から在庫の部品を取り出して、数を数えていた。決算の棚卸で数を確認しないといけない。在庫と言っても、清算中の旧会社の在庫だ。
「これが売れたら、まだ資金繰りが楽なんだけど・・・」
新会社にも資金を出しているだけじゃなく、旧会社の分も立替支払いをしているので、この部品がお金になったら一番いいんだけどなと深田は考えた。
「ん、ちょっと待てよ・・・」
そうだ、なんで売らなかったのだ。
忙し過ぎて余った部品を処分するのを忘れていた。
「え?在庫ですか?」
仕入れ元の商社の営業マンが声を上げる。
「そう、これ、処分したいから売って欲しいんです」
「わあ、その高価な部品、確かに売れそうですね!いいですけど、どうしましょう?」
「取りに来てもらってもいいですか?」
「もちろん、いいですよ」
という返事から間もなく商社の営業マンがやってきた。
「そういえば、社長。S社から電話があって、エリさんと一緒に飲もうって誘われているんですよ」
「え、そうなの?」
深田は目が丸くなった。S社と言えば、国の研究所で入札をした会社で、R社はその下請けだった。エリがいなくなって、S社は一度深田のオフィスを無断で荒らしていったが、警察に届けたのに丸ノ内警察は被害届の受理を拒んだことがあったのだ。
「社長、大丈夫ですか?」
営業マンの声で深田は我に返る。
「あ、いや。エリちゃん、親が来て衰弱しきっていて歩くことすらできないって言われたまま連絡が取れないんですけど・・・」
深田の言葉に営業マンは『しまった』という顔をして、「今度、我々も飲みに行きましょうよ!僕、銀座の店で行きたいとこあるんです!」と言って帰って行った。
もやもやした気持ちでその日は終わった。
「でも、まあ、これで問題が一つ片付いて良かった」
そう呟いて深田はソファにもたれかかった。彼女の事は忘れよう。今は、仕事の事だけ考えるのだ。
一般的に、在庫部品はマーケットに出すと一週間くらいで売れてしまうらしいから、さっと換金できれば資金繰りだって助かる。
ところが、それから一週間経っても一カ月経っても商社から連絡は無かった。
「まったく、いつになったら売れるのやら・・・」
そう思っている矢先にオフィスの電話が鳴る。
「はい、R社です」
深田が電話に出ると、部品メーカーだった。
「ふ、深田社長。大変です」
『大変』か、久しぶりに聞いた言葉だ。エリがいる時、毎日のように『大変です』の一言で一日が始まった。
「なんですか、大変って」
「S社がうちに来ました!!」
「ええ、S社が?」
エリと会っているS社がどうして部品メーカーに行くのだ。
「何があったの?」
「実は、伝票を付け替えて欲しいと・・・」
「どういう意味?」
「うちが御社に売った部品をS社のものだと伝票を切り直してほしいと言われました」
「ハァ?そんなこと、できるわけないでしょ?」
「うちもそう言いましたが、S社からは『R社社長の深田萌絵にR社の部品を盗まれた。製品番号はあるから、それを元に伝票を切り直してほしい。公安警察にも相談して許可を得ている』って言われたんです」
「S社には納品終わってて、部品盗むも何も無いんですけど・・・」
うちの会社の部品を、私が盗んで私の会社の倉庫に保管した罪で訴える奴も頭が悪いが、それを真に受ける警察も警察だ。
S社は暴力団と関係があると言われている会社で、社員は頭が悪いと評判の会社だがあまりにも酷い論理構成だし、それを聞く警察もどうかしている。
「というか、うちの部品、私が会社の倉庫に入れててなんかおかしいですかね?」
「そうですよね。うちもそう思って、経理と法務と相談したんですけど、伝票の付け替えは出来ないと回答しました。ところが、おかしなことに製品番号をすべて持っているんです」
「え?」
製品番号を持っているとすれば、こないだ部品を預けた商社だ。商社の営業マン、そういえばS社と飲みに行くと言っていた。
「公安警察も被害届を受理したって・・・」
「本当!?」
「そうなんです。S社はそう言ってました。僕はありえないと思ったんですよ。だって、御社がうちから買った部品を、どうやって御社が盗むんですか?僕は何かおかしいと思うんです」
「そんなことって、あり得る?事件番号分かります?」
「そこまでは聞いてませんが、『嘘だと思うなら公安警察のJ氏に聞いてみろ』と言われました」
深田は絶句した。
公安警察のJ氏。
ファーウェイ事件が始まって以来、一年間深田は公安警察に通い、情報を提供してきた。その担当警部が、なんと私を容疑者としてファーウェイと組んだS社の被害届を受理したのだ。
「この国って・・・」
犯人は被害者になり、被害者が犯人に仕立て上げられる国になったのか。
そういえば、朝鮮総連の弁護士は元公安警察のトップだ。
相談する相手を間違えて、いつの間にか自分が犯人に仕立て上げられている。
いや、エリだ。公安警察にはエリと一緒に通っていた。
エリが失踪して、それまで何もしなかった公安警察がS社に事情聴取に行った。
エリが裏で情報操作していなければ、さすがに公安警察もS社の馬鹿馬鹿しい嘘を真に受けるはずがない。
あの商社のウェブサイトをクリックしてみた。
そこには、人民解放軍の衛星用半導体チップメーカーと提携したとのリンクが貼られていた。
TO BE CONTINUED
http://www.casilsemi.com/index.asp

2015年12月1日火曜日

第18回戦 追記特許攻防とパテントトロール

マイケルはパテントトロールに特許を売った金でまた戦いに挑んだ。
パテントトロールは、特許だけを保有している会社で多くの知財系弁護士を抱えている。売上は主に特許収入、トロールと言われる所以は大企業に対して特許侵害訴訟を起こして収入をえているからだ。
一方、マイケルのような個人発明家は自分で訴訟する費用が無い。だから、使わないならパテントトロールに売った方が役立つのだ。面白いのは、侵害されている特許ほど高値が付くシステムだ。
パテントトロールに特許売却で得た資金115万ドル。1億円以上の金だが、チップビジネスを始めるには充分とは言えない資金だ。
それでも、彼は挑んだ。
プライドなんだろうか。
トレーダーも同じだな。
知人のオプショントレーダーは全財産失ったあと、アメックスカードのキャッシングで三百万円引き出してまた億にした。
人間は何をして、どこで生きるのか。
生まれた時から、もしかしたら、決まっているのかもしれない

第18回戦 マイケルの決意



ズズズ。
深田はオレンジジュースをすする。
普段ならカフェでは熱いカフェラテを頂くのだが、外事警察で事件について喋りっぱなしだったので喉がカラカラだ。
特定秘密保護法が施行されなければ、日本の衛星情報なんてとてもじゃないけど守られない。(2014年春当時は施行前)
マイケルが台湾調査局に誘拐されそうと被害を相談しても、アメリカみたいに被害者を守るシステムは無いからFBIに守ってくれとか、得意のたらい回しの術で煙に巻かれた。
「日本って意外と安全じゃないんだな」
考えてみれば治安は良いけど、国民を守るとか、スパイが国民を危機に貶めているという観点は無い国だ。自衛隊が戦地に赴いても銃に弾を詰めて構わないかどうか国会で議論する始末だ。
総務省の予算17兆円に対して、防衛省は4兆円と四分の一なうえに支出はほぼ人件費で貧乏省だ。防衛省は野党によってとことん冷や飯食いをさせられてるのだ。
「ラファイエット事件で殺されたフランス人は東京で殺された。犯人は捕まっていない」
マイケルはサンドイッチを頬張りながら応える。ラファイエット事件では台仏の捜査員証人含めて総勢14人が殺され、事件はうやむやになった。
「殺されても犯人すら捕まらないの?」
「警察に被害届け出したら捜査してくれるのか?」
言われてみればそうだ。
昔、友達が強姦されて警察に被害届けを出したが、その後警察からは音沙汰なし。逗子でストーカーに殺されたのは、エリの友達だ。
シンガポールでストーカー被害に逢った時、電話番号で加害者を割り出して2時間以内に逮捕してもらったと金融機関の女友達が言っていたのとは雲泥の差だ。
「FBIに相談しようよ」
「2008年の夏。馬英九が陳水扁を逮捕させた日、俺は台湾系FBI捜査官に捜査が打ち切られたと伝えられた。青幇は政治に強い。そして、警察捜査は常に政治だ」
台仏中で巨額の賄賂と引き換えにラファイエット級フリゲート艦技術を中国解放軍へと売ったラファイエット事件の犯人を追った政治家は民進党の陳水扁元総統だけだ。
「FBIも…。もうなす術が無いね」
深田はため息を吐いた。
陳水扁は病床の身でありながら投獄されて、治療も受けられない苦しみから自殺未遂までした。馬英九が総統である限り、事件の捜査は再開されないどころかマイケルが台湾へ帰る日もこないだろう。
「深田、どうしてまた会社を始めたか分かるか?」
深田は首を傾げた。
「昔、台湾で公開企業の社長だった俺は充分な金があった。中国スパイに付きまとわれて、オフィスは襲撃され、400以上あった特許は米国最大の弁護士事務所に俺のサインを偽造されて失い、結果的に20億円近い借金を背負うことになった。五つあった家を売り、借金を全額返した頃にはホームレス寸前だった。FBIに相談した頃といえば、俺の技術を証明しようにも特許もなく、製品も破壊された後だった。台湾系捜査官が俺に放った言葉は、『マイケルさんの技術が本物だと証明するべきです』だった。偽物呼ばわりだ。ところが、自分が本物であることを証明する為に、またチップを開発しようにも金が無かった。チップの開発は金がかかり過ぎる。開発どころか、生活するだけで精一杯だった」
凄惨なシチュエーションだ。
自分だったら、たぶん絶望して自殺してるだろう。
「捜査が中断になってしばらくして、自宅に手紙が届いた。米国特許庁が、偽造サインで取り消された俺の米国特許数十を返還してくれのだ。特許史上、取消した特許が返還されたのは初めての事件だ。この特許をすぐさま売りに出した。すぐにパテント・トロールから連絡が来て、10特許で115万ドルの値段が付いた。おとなしく生きれば死ぬまで特許で生きていけることは確実だった」
「でも、そうはしなかったのね」
「俺はその金で元の会社のトップエンジニア2人を呼び戻して研究所を作った。金だけあって朽ち果てていくなら、俺は自分が本物であることを自分で証明する。それだけのことだ」
深田はハッとした。マイケルの技術が市場に出回ると困る人物がいる。
「マイケル、それだよ。マイケルの技術が市場で出回ると馬英九は困るんだよ。だから、藤井を使って製品化の妨害をしたんだ」
アルファアイティの藤井はマイケルから依頼された製品化用ソフトウェアをいつまで経っても作らなかった。その意図は、市場にマイケルの製品を出さない為だ。
瞬間、深田の携帯が鳴った。
「萌絵さん、大変です!」
エリの声が震えている。
「大変、大変って、なんなのよ」
既に大変過ぎることが連日起こっている。
「依頼していた基板設計の納品がなされませんでした」
「な、納品されなかった?」
「やられた、基板が無いと製品ができない。オフィスへ戻るぞ」
2人はカフェを飛び出し、オフィスへと急いだ。
深田の運命やいかに…
続く

2015年11月30日月曜日

第17回戦追記 台湾国民党と青幇の歴史



中国には無数の暴力団、幇が存在する。幇は日本で言うところのなんとか組みたいなもので、違うとすれば複数の幇に同時に所属する事ができるところだ。
中国共産党、江沢民時代までは上海幇と呼ばれる幇の構成員が強かったが今は習近平によって一掃されてしまっている。
有名どころで四海幇や竹連幇などもある。
四海幇、竹連幇は台湾青幇の配下の暴力団組織で、台湾裏社会を牛耳る暴力団『青幇』(チンパン)は数百年の歴史を持つ強固な幇だ。
語られている伝説では、青幇が最も栄えたのは上海疎開地時代、杜月生と黄金栄の時代だ。暴力団が一番儲かるのは戦争だ。麻薬、売春、武器の密売、そして諜報活動。
日本の上海侵攻が成功したのは、青幇が国民党の情報を日本軍に売ったからである。今でこそ、青幇は抗日英雄と語られているが実は彼らこそが売国奴なのだ。
青幇は決して日本軍のみを助けたのではない。彼らは日本軍を救い、共産党を救い、国民党にも協力した。
青幇が戦後絶滅したと語られているのは、国民党の情報を共産党に売ったことにより最終的に『同朋を売るのは許せない』と共産党にマシンガンで銃撃された事件があった為だ。
第二次世界大戦後、青幇は拠点を上海から香港に移動してそのまま消滅したと言われているが、実は違った。戦力の大半を失った国民党蒋介石に協力して、台湾を収めたのだ。
蒋介石は毛福梅との間に出来た息子蒋経国を嫌っていた。理由は自分が家に帰らず上海で女遊びしている間に出来たからだ。
蒋介石は蒋経国を暗殺しようと試みたが、蒋経国は暗殺を恐れてモスクワへ留学し共産主義を学んだ。元々、蒋経国は共産党だったのだが、国民党が力をつける程に共産党の監視下に置かれたので、敗戦した国民党に合流する。
しかし、蒋経国は青幇を嫌っていた。また、青幇による暗殺を恐れて距離を置いていたが、ある頃から台湾政治の実務に関わるようになる。蒋介石の孫によると、晩年の蒋介石は酷い認知症で政治どころでなかったため、長男の蒋経国が実務に携わる。モスクワで政治経済の教育を受けた蒋経国が台湾を成長に導いた。蒋経国は反蒋介石ではない事を証明するため、自分の身を守る為に蒋介石を英雄にし立てあげた。蒋介石万歳音頭はそこから始まって、万歳しなかったマイケルは11歳で政治思想犯として投獄されたという皮肉な運命だ。
蒋経国は青幇による台湾支配を嫌って、台湾人李登輝に政治を託すことを約束した直後に暗殺され、台湾政治は青幇下部組織で政治と経済を司る仁社に移行した。李登輝をしても、青幇には勝てなかった。
仁社
陳水扁は事実上抹殺されて、この物語は青幇下部組織仁社トップ馬英九に引き継がれていく。
続く

第16回戦追記 犯罪人引渡し条約と台湾




死刑制度のある日本と逃亡犯引渡し条約を結んでいる外国は少なく、意外だが米国と韓国しかない。
無論、表上は国家とは認められない台湾とそんな条約を日本は結ぶはずもないのだ。
今回、台湾調査局はマイケルを探して実力行使に出てきた。
ここでポイントになるのは、何故台湾当局は外務省経由で国際警察を通じて日本の警察に協力を要請せずに台湾調査局を送り込んできたのかという部分である。
彼らがそうできない理由、それはなんだったのだろうか。
深田は共謀犯になるのだろうか。
台湾最大の半導体メーカーWinnond とマイケルの関係はナゾだ。
深田の運命、本当にどうなっちゃうの?という感じです。

2015年11月29日日曜日

第16回戦 逃亡犯



「エリちゃん!」
月曜朝9時。
深田はオフィスに駆け込むなり、エリを呼んだ。呼ばなくても、エリとバイトのこけししかいないのだが。
「萌絵さん、どうしたんですか?」
「マイケルが裁判の日から、全く連絡が取れない」
「エエ!!本当ですか?」
「台湾調査局には捕まってないはずなんだけど…」
とは言うものの、深田は不安だった。
「そうだ、マイケルさんの部屋の鍵を預かってますから、一緒に部屋に行ってみましょうよ。何か分かるかもしれません」
エリはそう言って、引き出しから鍵を出した。
二人はガチャガチャとマイケルの部屋に押しかけたが、部屋はもぬけの殻だった。
潔癖なマイケルらしい、シンプルな部屋は整然と整えられて髪の毛一本落ちていない。マイケルが潔癖なのは、侵入者が訪れば一目瞭然にする為だ。
「マイケルさーん!」
「マイケル!」
二人は声をあげる。
寝室にもリビングにもマイケルの姿はなく、深田は書斎に入った。
書棚には幾つものファイルが並んでいた。深田の書棚と違って本は一冊もない。マイケルは本を読まない。本を読まないのに、誰から何を聞かれても殆ど全ての質問に応えることができる。
「なんだよ、このファイル」
本も読まない書類も作らないマイケルがファイルなんて、と思って深田は好奇心でファイルを開いた。
ペラリとカイザーエレクトロニクス社の社長から陳水扁に当てられた手紙が出てきた。
『親愛なる陳水扁総統。ジョイントストライクファイター(統合打撃戦闘機)の開発を米国政府から受けて以来、私達は中国スパイや台湾マフィアからの執拗な攻撃にさらされ、特に王源慈氏の会社は危険な状態にあります。総統におかれましては、台湾国内における王氏の活動をサポートして頂きたく存じ上げます。
カイザーエレクトロニクス社、社長より』
「なんだ…これ…」
カイザーエレクトロニクス社といえば、ロッキードマーティン社の下請けでマイケルと共同で開発を行なっていた会社だ。
その会社の社長がわざわざ台湾総統に手紙を書くってどういうことだ。そして、何故その手紙の写しがここにあるんだ。
http://www.prnewswire.com/news-releases/elbit-systems-and-kaiser-electronics-selected-for-lockheed-martin-joint-strike-fighter-73910952.html
深田は不安に駆られてファイルのページを捲る。そこにはFBI被害者保護プログラムの証明書とステイトメントと書かれた書類が挟まっていた。
『-ステイトメント- 私、王源慈は、FBI被害者保護プログラムにより、氏名をマイケル・コーに変更し、米国市民になることをここに宣誓します。マイケル・コー』
ミミズがのたうったような汚いサインは紛れもなくマイケルの字だ。
「カイザーエレクトロニクスの社長から、陳水扁総統への手紙、FBI被害者保護プログラム、アイデンティティー変更の宣誓書、マイケルの妄想みたいな話はもしかして本当なの…」
深田は更にページを捲った。
旧漢字だらけの書類に台湾検察と冠されたものが見られた。深田が習った中国語は文化大革命後の簡体字で、香港・台湾で利用されている複雑字を読むことは難しいが、いくつかの漢字は日本と共通だ。
『告発者、焦祐鈞』名前に見覚えがあった。告発者は、刑事告発を行なった人間のことだが台湾語でも同じ意味だろう。
「この名前は…」
間違いなく、青幇元首領焦庭標の息子だ。
マイケルがジョイントストライクファイターの設計を行なっていた時に馬英九と組んでその設計を盗んだ張本人。
「いやいや、同姓同名かもしれないし…」
スマホで焦の名前を検索すると、百度の辞典に彼の名前が出てきた。
『焦祐鈞 台湾電電公会理事長、華邦電子社長』
華邦電子、英名Winbondと言えば、台湾最大のチップメーカーだ。そこの社長が、マイケルを刑事告発している。
http://wapbaike.baidu.com/view/3507741.htm?adapt=1&
告発状の次のページには、台湾検察の書類が挟まっていた。
『王源慈  逃亡犯』
マイケルが台湾から米国へ亡命した直後の日付で、台湾検察から逃亡犯と名指しされた書類が出てきた。
「マイケル、政治思想の違いで亡命しただけじゃないのか…?」
よりによって、告発者がWINBONDの社長だなんて、そんなバカな。
深田は血の気が引くのを感じた。
金融の世界では信用が命だ。
深田萌絵の名前で、株主から出資を受けてこの会社を立ち上げた。この会社の為に三年半で費した資金は、既に億を超えた。
その企業価値の核となる技術を開発している人間が台湾で犯罪者で逃亡犯、その名はFBIの書類でマイケルの過去の名前であることが証明されている。
「萌絵さん、やっぱりマイケルさんの行き先の手掛かり無いですね」
エリがドアの向こうから声を掛ける。
「萌絵さん?」
深田はエリに応えることができなかった。
仮に、マイケルが本当に犯罪者ならば、自分の立場は共謀犯だ。軽い罪なら台湾調査局が日本まで彼を追ってくるはずか無いし、台湾最大のチップメーカーの社長が告発するはずもない。
まずい。マイケルの技術が日本を救える技術だと信じ、その開発の為に自分の資産だけでなく、他人資本まで入れてしまったので深田の責任は重い。それだけでなく、数少ない女友達のエリまで巻き込んでいる。
「萌絵さん?」
彼女の声が響く。
「エリちゃん…」
「どうかしたんですか」
キョトンと大きな瞳でこちらを見つめるエリに深田は応えることができなかった。
もしかしたら、自分は取り返しの付かないことをしてしまったかもしれない。エリに話せば彼女にまで責任が発生する。
「エリちゃん、とりあえずオフィスに戻ろう」
深田は、眩暈がする思いで几帳面に整理された部屋を後にした。
続く